気になる木。
今住んでいるアパートの近くの大きな木のはなし。
「横浜市」という響きからは想像できない貫禄を持った木で、越してきた時からちょっと気になっていた。
貫禄はあるが存在感がなく、うすいおじいちゃん、みたいな感じ。
ある日、連れとカメラ散歩していると、緑のおじさんから声をかけられた。緑というのはポロシャツのいろであって、深い意味はない。
どうやら近所にホームセンターができるらしい。私からしたら近所というより隣、というのがしっくりくる。細い道路をはさんで隣の敷地なのだ。
この敷地、ちょっと広くて、一面の芝生が大変心地よく、お気に入りだった。芝生の向こうには凛とした富士山がかまえている。この風景も引っ越し要素になっていたのは間違いない。
そんな一面の芝生畑の脇にどん(いや、ポンが正しい)とあったのがこの気になる木。空気みたいに町にとけこんでいた。
さらに緑おじさんが言うには「この木も切られる。」とのことだった。
「ここにこんな木があったという記録を残してほしい。」とおじさんがいった。
その時持っていたのがK2。初めて人に与えられたミッションだったが、あの時の緊張感は忘れられない。変な汗がでて全然シャッターが切れなかったな。カメラマンはむいてないらしい。
とりあえず何枚か撮った。
それから通勤の時も帰宅の時も気になる木の様子をうかがってきた。
2009年6月12日。その木はあっけなく切られてしまった。やはり存在感がなかったせいか、切られたというインパクトはなかった。
しかしぽっかり空いてしまった暮れの空には、さらに存在感のなかった八木アンテナがよく見えた。