RAWイメージング。

実は全部JPEG撮って出し。

それぞれのスーパーカブ物語。


田舎の必需品、スーパーカブの話。
うちの実家も例に漏れずスーパーカブを所有している。
じいじいわく、「25年くらい前に栗田(自転車商会)で買った」だそうだ。
車体はスーパーカブデラックス。塗装とフロントキャリアがデラックス型の特徴なようだ。
現代のカブは蒸したお茶っ葉のような濃い緑だが、こいつは曇りに日に見る茶畑のような色。実にしぶい。
通に言わせるとこの型のハンドルはカモメハンドルというらしい。べつにストレートな一文字ハンドルがある。
75km/hメーター仕様でウインカー灯が装備されいる。ウィンカーをつけると、か細く「ミ゛ィ…ミ゛ィ… 」という。
前バッテリーを換えたのはいつだろう。
整備はまともにされていないが、キック3発以内に始動できる。

表紙になれなかった写真。
78年から80年あたりのカブらしい。

走行距離は1万とちょっと。2009年8月23日の記事で1万を迎えたと書いてある。当時26年目とか書いてあるけど根拠がない。
エンジンは腐食が激しい。フレームも錆が激しい。しかし野ざらしでない分いくらかまともに見える。
転倒歴は知っている限り2回。よって左ステップが若干曲がっている。
そんなカブは「じいちゃんの原付免許更新にいく為の足」として活躍する。まったくもって本末転倒な話だ。
夏休みだけは孫達の格好のおもちゃになるが。

2008年には、浜松に用があって南下中に後輪がパンク。トレッドも割れて再起不能に。ダメもとで飛び込んだ浜北の自転車屋でタイヤを交換。そこの親父がまたいい人で「若いのがこんな(整備不良の)バイク乗ってちゃいかんよ。」と言われたのを思い出す。お元気ですか。

さて今年の夏の思い出。
今年は軽く分解してワックス掛けをした。ニュートラルランプの球切れとブレーキランプの球切れだけは直そうと思ったので部品を探しに。またダメもとで入ったやっているのかやっていないのか、そもそも何屋かわからんところに入った。
ぼろっぼろの赤い「HONDA」の看板がなかったらただの納屋にしか見えない。
こういう店の共通点、当然にように人がいない。コンクリートの上に玉ねぎが転がっている。店先には梅干しも干してある。
小さい女の子がのぞきにきて「だれかきたー」といったら、これはまた理想的なじじいが出てきた。この感じが懐かしくて良かった。
白い伸びたランニングシャツと作業ズボン。歩みは極めて遅い(うちのじいじに聞いたら86らしい)。
「ああダメっぽいな…」と諦めかけながらも事情を話すとのそのそパーツカタログをめくりだした。
俺「ブレーキランプが良く切れるで2個あったら欲しいやぁ」
爺「そりゃぁバッテリがええかん(とても)弱ってるだよ。替えんとだめだに。」
俺「(その言葉を聞いて嬉しくなる。)良く解ったじゃん。バッテリーないだよ。」
爺「6Vの奴だら?」
俺「そうだけど、高いから今はまだ替えんで。」
爺「あぁ…(パーツカタログをめくる)」
時間がゆっくり流れる。
私は汚い机一面に散らばった「なごやん(名古屋のお菓子)」が気になって仕方なかった。机に限らずあらゆる空きスペースに散在していた。少し怖かった。
俺「後継ぎいるだ?」
爺「息子が継ぐか継がんかわからん…」
俺「ふーん…」
外に3台走りそうな車があった。息子の奴だろう。この店の収入では買えそうにない。
爺「…これだ」
狭い店だが木棚に部品がしこたまあった。段ボールに書かれた「ウインカアツシ」がいい感じ。
こういう店が大好き。
見つけた部品は「なごやん」のブリスターに入れられて行く。興味本位で聞いた左のステップゴムも見つかった。
値段は言い値かなと思ったが、ご丁寧にも2011年度版価格表が出てきた。あなどりがたし。
爺が読み上げたのを私が電卓で打って1.05倍する。ステップは640円くらいだったよ。

なんか短時間にいろいろ学んだ気がする。表現できないんだがこうありたい、と思ったことは間違いない。
量販店もいいが、たまにはこんな田舎の店に足を踏み入れてみるのもいいだろう。きっといいものが見れるはず。


良く見かけるカブだが、一台一台にいろんな思い出があっていい。なにせカブは世界一風景に溶け込むバイクだ。
なんというか、「その時、いつもカブがあった――」みたいな感じで記憶の片隅にあるだけで絵になるなぁなんて思う。
乗れば奥深い、いじって楽しい、あるだけで画になる、こんなバイクないでしょう。

なにはともあれ、うちのカブとじいじのコンビは最高だ!って話。